河野がいろんな人と対談、鼎談していきます [河野武 責任編集ブログ]
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早すぎたCGMサービス「オルトアール」の話(その2)


船田さんと初めて会ったのは、いまからもう7~8年も前のことになります。その当時のぼくは半分、というかほとんど引きこもりで月に数回しか電車に乗らないくらいの怠惰な生活を送っていました。

そんなぼくが自分で手を挙げて手伝いたいと思ったのが「オルトアール」だったんですけど、当時はまだ27歳くらいで(とくに若いってわけでもないけど経験が浅すぎて)ビジネスについてはぜんぜんわかってませんでした。まあそんなんで手伝わせてくれと言えちゃうくらい、無知ってのは強いなあと思うわけですが。

てことでまずは当時の話から。

初めて会った頃の話

河野:
いまぼくは、ちょうど当時の船田さんの年齢になったんですけれど。
船田:
はい、はい。
河野:
あの時、2002年か2003年ぐらいに、いきなりお手伝いしたいというメール差し上げて、中野坂上(当時のオフィスは中野坂上にあった)まで会いに行って、ぜんぜん使いものにならなかったんですけど(笑)
船田:
いや、そういうワケじゃないんですけれどもね。やっぱりビジネスとして、人をいっぱい雇って、ちゃんと会社として回して行くってのは難しいなと。
「じゃあ、君が入ってきたら、ちゃんと面倒見てあげるよ。」って言える状況では、たぶんないだろうって、我々の側でも完全に感じてたので。
カタギの人はちょっと距離を置いておいた方が安全なんじゃないかと思ってた時期ですよね。
河野:
あはは(笑)
ぼくの中で、自分からコンタクトを取って、会いに行ったのは初めてのことだったんですよね。今でこそ、いろんな人にこうやって、お話伺ったりするんですけど、当時は、どっちかっていうと引き籠ってたんで。
船田:
言ってましたね。
河野:
その前だと、「ポストペット」を作られた八谷さん(八谷和彦)にメールしたくらいかな。彼は「メガ日記 」っていうサイトやっていて……。
船田:
やってましたね。
河野:
あれを知ったときにはもう終了してたので、ぼくがもう1回やりたいから「メガ日記」という名前を使ってもいいですか、みたいな連絡を取ったぐらいで、ほんとに数少ない自分から動いた経験なんで、船田さんとのことはとてもよく憶えているんですよね。

船田さん本人によるオルトアールの自己採点

河野:
ぼく自身、「2ちゃんねる」は、一時期、それこそ存続危機みたいなのがあって、UNIX板の人たちが頑張ってプログラムを改良した話とかも、ずっとリアルタイムで見てて。

ぼくも「まんがseek」のプログラムをひとりで書きながら、プログラム板とかそういうところで、PHPのこととか助けてもらったりしてたんで、なんていうか、「2ちゃん(2ちゃんねる)」のいいところも悪いところも両方見てたんですね。で、まあひどいところもあるにはあるけど、「便利」なサイトではあるなあという感じでは見てたんですけど、じゃあ「2ちゃん」が楽しいかっていうとまた別の話で、ぼくにとっては楽しくはなかったんですよね。
コミュニティの形として、データベースとして価値が最大化されるように志向して、ああいうある種、殺伐とした空気をひろゆきは作ってたみたいなんですけど、やっぱりそこは安住の地ではなくて、だからこそぼくも「オルトアール」のほうをすごく見てたし、自分でもユーザーとして使ってたんですよ。

いま振りかえってみて、船田さんの自己評価では、当時の「オルトアール」は、どれくらいご自身がやりたかったことを実現できてましたか?

船田:
そうですねぇ……。
さっきのその、自分がほしいコミュニティのイメージと、ビジネスとして実現したいことのイメージを分けて話すと、作りたいもののイメージっていうことならば、自分のイメージを100とすると、まぁ100できたと思いますね。
で、ビジネスの方は100のうちの1ぐらい(笑)
河野:
ははは(笑)
船田:
平均すると、50.5ぐらいですね(笑)
河野:
(笑)
船田:
そういう感じになりますね(笑)

オルトアールは早すぎたCGMサービス

河野:
ではちょっとビジネスよりの話を。当時、いろんな取り組みをされてたのはリアルタイムで見てたんですよね、Alt-PR(船田さんたち「オルトアール」メンバーが製品レビューを書く広告企画)の話もそうですし、あとはAdSenseをサイトに入れてみたりとか。

でも、実際にそこでの収益が立たなくて、船田さんの過去のインタビューでも、ああいうコミュニティを企業が作っていく部分を、まあ請負なりなんなりで手伝うことで、ビジネスとして成り立たせたいって話があったんですけど、それも難しかったわけですよね。そのへんは逆に今だったら、ビジネスになったんじゃないのかなという気もしていて、なんていうかその、「時代のズレ」みたいなのってあるじゃないですか?

船田:
うん、そうですね。
河野:
あの頃は、企業がカタログ以上のウェブサイトを作ろうっていう企画自体に現実味がほとんどなかったですよね。今でこそ、いろんな企業がどうやって顧客を自社サイトに連れてくるかっていうことに関心を持って、そのひとつの解としてのコミュニティ運営みたいなものがあるのかなと思うんですけど。
今だったら、企業のコミュニティ構築なり運営なりを提案できたりしそうですか?
船田:
うーん、そうですね。できるかできないかと言えば、できそうだと思うんですけども、やっぱりその……、けっきょくちゃんとやれるかどうかは相手次第じゃないですか。
河野:
はい。
船田:
相手の理解度っていうものには、ものすごい違いがありますよね。
おおざっぱに言うと、相手の理解度をあまり期待しない、できない状態で請け負うことになるパターンが、まあ普通の企業相手に仕事をする場合は多いと思うんですよね。
ただ、多いと思っている僕のこの認識が、世間知らずで、もうすでに時代はそんなんじゃないという話もあるのかもしれないと思ったりもするので、スパッと言い切れないんですけどね。

で、提案したいかどうかで言うと、相手がよっぽど話のわかる人じゃなければしたくない、っていう感じですかね。

河野:
なるほど。
船田:
あえて言うならば、もう1回やるならば、やっぱり自分でやるほうがいいって感じですね。
河野:
では今、自分で、もう一度、ああいうサイトを作るとして、サイト自体で収益化できそうですか?
船田:
う~ん、人(ユーザー)からお金を取るという意味では、やっぱり無理でしょう。
河野:
はい。
船田:
方法論としては、すごく似たことをやると思いますね、「オルトアール」と。
「オルトアール」そのものは実験であって、そこから出てくる何かを、マネタイズするっていう発想。それ自体は、変わんないと思いますね、もう1回やるとしても。

船田さんから見た「ほぼ日」について

河野:
なるほど。ではもうひとつ。ほとんど同じ時期にできてるんで、「ほぼ日(ほぼ日刊イトイ新聞)」との比較とかけっこうされてきてますよね。どっちがおもしろかった、おもしろくなかった、とかいろいろ言われてきたと思うんですけども、「ほぼ日」自体は物販とかでマネタイズしていて、しっかり収益を上げているじゃないですか。
船田さんは「ほぼ日」をどう見てらっしゃいますか?
船田:
そうですね、「ほぼ日」って、ちょっと、ここのところはあんまり読まなくなっちゃったんですけども、昔からメニューが縦に並んでたりなんかして、なんかすごい似てたんですよね。
で、「ほぼ日手帳」が出てきた時に、結局、紙刷ってマネタイズするしかないのかみたいな、がっかり感はありましたね。
ただ、どういうふうにマネタイズしてってるかっていうのは、外からじゃ、よくわかんないじゃないですか、あの会社って。糸井さんが何か裏ワザいっぱい使ってるのかもしれない。
河野:
そうですね(笑)
船田:
その糸井さんの裏ワザ全部を含めていくと、やっぱり結局、糸井さんありきみたいな。発想であったり、バイタリティであったり、能力であったり、カリスマ性……、うーん、カリスマ性かな、まあカリスマ性ですね(笑)
河野:
ははは(笑)
船田:
人間の魅力であったり、コネクションが前提というか。あと、広告畑っていう、立脚するマーケット。そういう条件を、うまく使っていかないとダメなんでしょうね。
河野:
そうですね。

(取材日:2009/7/9、取材場所:デジカル株式会社、会議室)

「平均すると、50.5ぐらいですね(笑)」というコメントが船田さんらしいなと思ったのですが、「オルトアール」のコミュニティそのものが創設者から見て満点の評価だったというのは、当時のいちユーザーとしてはうれしく思いました。

今回のテーマとして考えていた「時代性」みたいなものは、ぼく自身が過去に作ってきたサービスについてもよく考えていることです。どんなに良いものでもタイミングを間違えると見向きもされないことはあるし、コピペのようなサービスが数年遅れたばっかりに大ブレイクというのもあります。このへんはビジネスに限った話ではなく、芸術やエンタテインメントの世界でも同じですが、この見極めがいつの時代も重要なんだとぼくは思っています。

次回はネットサービスのマネタイズについて伺っています。

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