河野がいろんな人と対談、鼎談していきます [河野武 責任編集ブログ]
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早すぎたCGMサービス「オルトアール」の話(その3)


「ネットビジネスのマネタイズには3つしかない」と最初に言ったのはどこの誰だか知りませんが、僭越ながらぼくも同じ結論に数年前に至って、それ以来はあちらこちらで話をしています。

今回はそういうマネタイズにまつわるお話です。

インターネットビジネスにおけるマネタイズ方法

河野:
実際、インターネット上でビジネスを考える時に、さっき出てた課金モデルの話、あるいは広告モデル、あとはまあ、「ほぼ日」みたいな作る、売るみたいな物販モデル

ぼくは大きく分けて、この3つのモデルの派生しかないだろうと思っていて、当時と比べるとここ数年は、インターネットのユーザーが増えたんで、広告モデルが成功しそうな可能性がちょっと上がったと思うんですね。
とはいえやっぱり、mixiみたいにどんどんどんどん広告の価格をダンピングされると、どこも儲かんなくなってるというのも現実としてあって。

それで最近では課金をどうするかっていう話が、また盛り上がってて、むしろネットでサービスなりメディアなりを成り立たせるには課金しかないんじゃないのみたいな意見も出てたりするんですね。

そういう意見もわかるし、とはいえ課金が成立するのは、いま船田さんが難しいっておっしゃったようになかなか簡単ではないと思うんですよね。

船田:
うん、うん。
河野:
以前、船田さんはTwitterについて、儲かんなくていいぐらいの話だから成立してるみたいな話もされてたんですけど、いま実際にああいうサイトを作りたい、ああいうコミュニティを作りたいっていう人たちに対して、どこにマネタイズのプランなり戦略なりを考えていけば、実現可能性がありそうだと、アドバイスしてあげられますか?
船田:
僕のアドバイスだと、裏付けがないんで、あんまり説得力がないんですけど(苦笑)
河野:
ははは(笑)
船田:
まあ、可能な限り客観的に考えると、iモードのようなケータイサイトならば、どういった部分に対して対価を払っているのかよくわからないんだけど、そのサービスを使うことによって、お金が引かれていっているっていう、いい意味で曖昧な課金の概念を導入できるんですよね。コミュニティサイト側から見た場合。
サービスのインフラを提供することによって、私たちは月100円なり、200円なりをいただくんですよって感じで言えると思うんですよ。

なので、インフラの提供と割り切ってしまって、そこでやりとりされるメッセージのおもしろさだったり、コミュニティの質みたいなものはいったん置いておいて、インフラです、インフラがんばってます、私たち努力してますから、だから200円くださいと。
そのぐらいのところから、積み上げていく感じでしょうね。

河野:
なるほど。

船田:
じゃ、200円で何できるんだっけって話なんですけどね。
ほんとに、いま現在、200円をiモードで課金して、「オルトアール」的なコミュニティやれるかっていうと、またいろいろ問題あると思うんですけども、考え方としては、そういう発想ならあるかなと。
あとは、その200円を毎月もらうっていう課金手段が、iモードじゃない他のものが必要かもしれないっていうだけであって、論点は整理されるんじゃないかと思うんですよね。
河野:
よくわかります。たしかにそうなんですよね。
結局、ニフティも、ある年から、えっと何年だったかなあ、ちょっと何年か忘れましたけど、90年代の後半にIDひとつにつき200円くださいっていう、なんともひどい話をいきなり始めたわけですけど、それで売上ががーんと上がるんですよね。
船田:
うん、うん。
河野:
要は売上のベースをどこに作るかっていう話で、ビジネスの根っこを支える意味では重要ですね。
船田:
そうですね。
河野:
そこは、考えなきゃいけないですね。

競合や、投資として考えた場合も踏まえて

船田:
じゃあサービス利用で200円くださいって時に、結局その、ユーザーに安く資源を提供して、たくさんの人に使ってもらうっていうところに行き着きますよね、そのビジネスモデルは。
それで、ビジネスなんで当然、競争になるワケじゃないですか。
河野:
はい。
船田:
そうすると、今、言ったインフラ的な発想で行く場合は、規模の経済ですよね。スケーラビリティのあるシステムで、ちゃんとスケールさせていくことになる。

スケーラビリティだけあってもダメで、スケールしないといけないワケですよね。
それをやろうとすると、必然的に日本語のコミュニティだと、母数の問題で競争力がないわけですよ。

そこを解決しないと、いま言った正攻法で積み上げていくやり方を、日本の、日本語のコミュニティでやるっていうのは、難しい気がしてるんですよね。
「そっか、それ良さそうだな」って、たとえばGoogleにサクッとマネされたら終わるじゃないですか。

河野:
そうですね(笑)
船田:
やっぱり競合がピッて出てきた時に、どのくらい軽く終わっちゃうかっていうところを、投資としてはちゃんと考えておくのも重要ですよね。
河野:
はい。
船田:
そうすると、けっこう簡単にヒネられるビジネスだと思うんですよ。
なので、さっき言ったのは、下から正攻法で積み上げていく場合として言ったんですけど、そこまで考えて、さらに言うと、やっぱり正攻法で積み上げる型を考えつつも、「ほぼ日」的な、あの手この手でマネタイズをして収益化を図るっていうほうが、やっぱりリアリティを感じますね。

船田さんから見た「mixi」について

河野:
たしかに今、おっしゃったとおり、言語圏の規模の話はありますよね。さらに言えば、日本ではすでにYahoo!のアカウントって、ものすごくあるわけですよね。
全世界でいうと、Goooleとかがものすごいアカウントをすでに持ってしまっていて、彼らが似たようなものを作ちゃった瞬間に、ユーザー数的には、あっという間に抜かれちゃうような土台はもう整ってしまっていて。
まあGoogleなんかは、それこそサービスのいたるところに広告貼りますよみたいな、マネタイズそのものもけっこう簡単にできちゃいますよね。Yahoo!もできちゃう。

それこそ数年前までは、今もかな、いかにGoogleに買ってもらうかってのが、ひとつのイグジットみたいになってしまってたんですけど、なかなか独立した状態でがんばり続けるっていうのは難しいですよね。そういう意味では、「mixi」がわりとうまくひとり立ちしちゃった、できたケースだと思うんですけど。

ちょうど、「mixi」が出てきたのは2004年で、「オルトアール」の中間地点くらいなんですけど、「mixi」が出てきた時って、船田さんはどういうふうに見てましたか?

船田:
「mixi」はねえ、う~ん……、インターネットであるということは、徹底的にオープンであることの、いいところと悪いところを受け入れて、うまく使うってことだと思うんですけども。
河野:
ええ。

船田:
でも、それをそのまま受け入れるんではなくて、君たちこの独自空間に入りなさい、というあり方は、僕の中では退化って感じですね。
退化であり、怠惰である、という気持ちなんですね。
河野:
うん、うん、なるほど。それはまさに、ぼくと同じですね。
ぼくはニフティサーブ、もっと言うとパソコン通信が終わったっていうのは、イコール、クローズドコミュニティというものが、ひとつの幕を下ろしたと思っていて、逆にまさにおっしゃってる、すべてをオープンにするからこその……、まあ、ここのトレードオフですね。

要は、何かを失うから何かを得られるわけで、もちろんトラブルはあるだろうけど、そこにしか未来はないんじゃないかとも思ったわけです。そこに「mixi」が出てきた時に、ぼくはパソコン通信の再生産だなと思っていて、その後に起こりうる問題、トラブル、犯罪、全部、その時点で数年先まで見えたんです。それこそ「ケツ毛バーガー事件」とかも全部。
ああいうパソコン通信時代にひととおりあったことが、「ああ、また起こるな」と。

でもそういうサービスが、何百万という人が使う、ある種のインフラになってしまった。
もちろんそこにはいい話もたくさんあるだろうし、一概にすべてを否定するものではないんですけど、けっこうぼくは最初から「危険だな」と見てたんですよ。でも、誰も止められずに、大きくなっちゃったわけで。

時代性と変わらないもの

船田:
誰かが燃料をくべないと、あの手のものって、途中で萎んで、ビジネスとして回っていかなくなるはずなんだけども、あれは誰が、どうやって燃料をうまくくべて、スレッショルド(閾値) を超えるところまで持っていったんですかね?
河野:
えーと、ぼくも正解はわかんないんですけど、やっぱり、今日の話のテーマのひとつ、「時代性」みたいなものなんじゃないかと。

そういう意味では、彼らはいいタイミングで(サービスを)出したってのが、いちばん大きな理由としてあると思っていて、それは単純にインターネット人口が増えた、増えてないとかって話じゃなくて、電通をはじめとする、いわゆる「お金を持って来る人たち」がいちばん飛びつきやすいタイミングで、それはUSで「Web2.0」とか言われてるのを横目で見て、まあ実際は梅田さんの「Web進化論」を読んで煽られてなんでしょうけど、彼らがいちばん前のめりになったタイミングで、そしてその時いちばんユーザーを持っていたのが、「mixi」だったっていうのが成功要因じゃないかと、ぼくなんか見てて感じますけどね。

船田:
説明を聞いて、安心しました。
河野:
(笑)
船田:
それなら、納得できるんですよ、ええ。
河野:
ぼくはわりと、ネットユーザーの価値観とか倫理感っていうのは、10年前とあんまり変わってない気がしてるんですね。
ただユーザーが増えれば、悪いことするやつも必然的に数は増えちゃうし、割合は変わんなくても実数が増えちゃうわけで。
で、愚かな人が増えてるってのは事実としてあって、ブログ見てても、Twitter見てても、一定の割合の人は困った人たちですよね。でも、多くの人たちはわりとなんか、根っから楽しんでるみたいな……、そういう感じはしますね。
船田:
そうですね。

(取材日:2009/7/9、取材場所:デジカル株式会社、会議室)

「オルトアール」や「まんがseek」ができたのが2000年、ちょうど「2ちゃんねる」や「ほぼ日」も同じ頃にできています。
今も続いてるサービスもあれば、もうなくなってしまったサービスもたくさんあります。10年近くも続いているのはもうそれだけで素晴らしいことですが、じゃあなくなったサービスがダメだったのかというと、必ずしもそうじゃないとぼくは思っています。

まあ「オルトアール」にしろ「まんがseek」にしろ、早すぎたことが終了の原因ではないんですけど、タイミング次第でブレイクの確率が相当変わるのも事実で、そういう意味ではちょっと早すぎたなあというのも正直な気持ちです。

次回はブログについての意見を伺っています。

2 comments

1 やまうら { 08.05.09 at 11:38 AM }

インターネットメディアで働いてますが、
やはりマネタイズは難しいです(当たり前ですが)。

広告は人員、営業を含めて難しいので
課金ビジネスに特化してますが(いわゆるBtoCに)、
おしゃっているように、簡単ではなく
いつも試行錯誤しています。

2 河野 { 08.05.09 at 4:14 PM }

課金は金額の妥当性以前に、回収方法が難しいですからね。
ケータイビジネスはそこが簡単になってるので、まだマシかなと思ってたのですが、今では競合も増えてるし、すぐに大手が「無料」にしちゃうので難しくなってるように見えます。

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