早すぎたCGMサービス「オルトアール」の話(その5)
ということで、今回は避けては通れない(まあ通ってもいいんだけど)サービス終了時の話を聞いています。アホな質問だなと思いつつも、あの事件がなかったらどうだったのかを直接聞いてみました。
このあたりは当時の船田さんの日記もあわせて読まれるとよいかと。
あの事件の話を
- 河野:
- 2007年に、えっとギリシャ人 でしたっけ。
- 船田:
- ええ、ギリシャ人。
- 河野:
- あの一連の事件で「オルトアール」が終わっちゃったんですけども、まあしょうがなかったとはいえ、いきなりだったじゃないですか?
- 船田:
- ええ。
- 河野:
- で、あれがもしなければ。まあ「たられば」の話をしてもしょうがないんですけど、あれがなければ、今でも「オルトアール」はずっと続いてたんですかね?
- 船田:
- そうですねえ、それは自分でも考えるんですけども、ギリシャ人はほんとに、ほんとにキッカケに過ぎないんですよね。
いつ、どこで、どうやめようかなーってのは、ずーっと考えてて。
あのギリシャ人にやられちゃったドメインジャックの件も、次の週にはもう復活してるんですよね。 - 河野:
- そうなんですか?
- 船田:
- 管理会社のNSIとやりとりして、アカウントを完全に僕が取りもどすとこまではいかないんですけども、ギリシャ人からは取り上げて、ひとまずNSI預かりの状態には、1週間後にはなってるんですよね。
- 河野:
- なんか、どこどこに英語の書類を出したりとか聞かれて。
- 船田:
- ええ、ええ、そうですね。めんどくさいんで、ちゃんとやらなかっただけで。
- 河野:
- はい。
- 船田:
- 最初にこれはマズいと思ったのは事実です。ただ、ちゃんと考えないとマズいぞという状況は、1週間か2週間後くらいには解決してたので、そこで、(サービス終了を撤回することも含めて)考え直すことはできたんですけども。
もう一回ちゃんとやる方向で考え直したとしても、今を逃したら、この先やめらんなくなっちゃうなって思ったのは、ありますね。
- 河野:
- なるほど。
- 船田:
- やめないで続けることが重要だから、もっとがんばれっていう自分もいて、でも続けるっていっても、7年やったぞと。自分の中では、準備の年も入れると8年やった気持ちになってるんで、8年やったら、もう十分やってるでしょうと。ドッグイヤーで言ったら、死んでてもおかしくないでしょって。
- 河野:
- たしかにそうですね。
- 船田:
- なので、まあいろいろと考えはしたんですけど、最終的には8年やったからいいかなと。まわりの人もだいたい、そういう反応でしたね。役目を終えたとか、みんな勝手に言ってたんで(笑)
- 河野:
- ははは(笑)
- 船田:
- まあ、そういうふうに閉鎖を決めたんですけど、それこそやめる時にひどく言われるサイトも、あるじゃないですか?
- 河野:
- ありますね。
- 船田:
- そういう意味では、みんなもだいたい、空気読んでくれたなって、感じはしたので、まあ、結果的には良かったのかなと。
「たられば」で言うならば、あのタイミングはきっとベストじゃないんだろうけれども、マルかバツかっていえば、マルだったのかなって思ってますね。 - 河野:
- ぼくがやってた「まんがseek」は2004年に4年目で閉鎖したんですけど、もっとしょうもない理由で終わってて、引っ越し先に光回線が引けなくて終わったんですよね。
もちろんレンタルサーバーを何台か借りて、移設なり移植なりするっていうのはできたんですけど、サーバーも5台か6台使ってたし、(ずっとプータローだったのが)その頃からビーケーワンの正社員になって忙しくなってしまったので、ちょっと大変だなと思って、けっきょくそこでやめちゃったんですよね。
- 船田:
- ええ。
- 河野:
- まあサービスが終わるのは、なんかしら理由があるんですけどね。
「オルトアール」の話も、たぶん船田さんの中でいろんな実験があそこで行われていて、途中からは極力シンプルみたいな形で、機能もあんまり付け加えずに。たしか、この同人誌(「オルトアール総合雑談中心のほん」)のインタビューでおしゃってたんですけど、要はサービスが廃れていくとかそういうことも含めて、見守りたいみたいな話をされてたじゃないですか。
- 船田:
- ええ、そうですね。カッコつけてますね(笑)
- 河野:
- ははは(笑)
- 河野:
- なんていうか、コミュニティをちゃんとプロデュースするって言った時に、伸びてる時もわかってなきゃいけないし、同時に何をやったらダメになっていくかということもわかっておく必要がありますね。
- 船田:
- ええ、そうですね。
- 河野:
- そういう意味では、船田さんにとっての「オルトアール」って、どう転んでも全部が教材になったのかなみたいな感じがしてたんですよ。
- 船田:
- そう思いますね。
あと、そこ(同人誌)に書いてあったかな。やっぱり最後の1、2年は、目的じゃないというか、気分の良くないことにエネルギーを割くことが増えていったんですね。たとえば、警視庁の外郭団体から「このメッセージを消しなさい」とか通告が来るとかね。ま、そういうふうになってきたことは、今おっしゃったとおり、一概に下り坂とはいえないんだけれども、まあ十分、社会の一部になって、ある意味いいところも悪いところも社会と同化しちゃったっていうか。
- 河野:
- はい。
- 船田:
- たまたま、ネットの中にあるだけで、そのへん歩いているのと一緒ってことじゃないですか。ラクガキすれば、おまわりさんに怒られるのと一緒のようにね。
- 河野:
- そうですね。
- 船田:
- そういう感覚になってきたので、ここから先の、完全に一般化した後に何が起こるのかも大事なんですけども、まあそれは僕がやらなくてもいいよねとは思いましたね。普通の会社の人が普通にやったとしても、こっから先はもうわかることだなっていう。
(取材日:2009/7/9、取材場所:デジカル株式会社、会議室)
サービス終了というのは誰しも経験したくないものですが、だからこそ経験してる強さもあるのかなと最近は考えています。実際、サービスを終了するにあたっては、ものすごくいろんなことを考えますし、ユーザーからのさまざまな問い合わせにも対応するわけで、そこで得られる経験値は貴重だなと思うのです。
だんだんと話の終わりが見えつつありますが、次回はTwitterやYouTubeなど海外のサービスについての船田さんの感想を聞いています。
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